ビジネスシーンにおいて、なにかと交渉事はついてくるもの。飛び込み営業先での話術。反響営業での落とし込み。商談ごとでの駆け引き。あらゆる場面でその交渉術は必要になってきます。「こいつに話聞かせるためにはどうしたら・・」「あの人との交渉に勝つにはどんな手が・・」そんな悩みを抱えて日々勝負に挑むビジネスパーソンは多いはず。でもそうやって闇雲に考えるだけでは絶対に切り開くことはできません、なぜなら相手は人間だから。
しかし、相手が人間であるからこそ、その人間心理を突く方法はあります。今回は、ビジネスの交渉術にはこんな裏があった!知らないままでは生き残れないたった6つの交渉術をクリップタイムしていきます。
知らないままでは生き残れないたった6つの交渉術
「交渉事は苦手だなぁ・・・」「私、口下手なんだよなぁ・・・」そんな風に自分を卑下していてはどんどん周りに追い越されてしまいます。
- このサービスの良さを知ってほしいだけなのにな・・・
- どうしてもあの企業と契約したい!
そんな、自分ではどうにもできない甘えん坊なあなたへ特別授業を始めます。
相手に飢餓感を抱かせて興味をあおれ
夏場になると渋谷や新宿の繁華街では、まるでほぼ下着姿のようなファッションで悠々と歩いている女の子が多くいます。パンツが見えそうなほど短いスカートをはき、見せブラ見せパンと言って肌を露出するファッションがもはや定番になっています。男を喜ばせるためにやっているわけではなかったとしても、その体のほとんどを露出したファッションを見て、男が喜んでいるかというと、案外そうではないようです。
男性の心理的には、さも「見てください」と言わんばかりの露出ファッションをされても、男性脳の欲望はそこまでそそられてはいません。男性心理的には、隠れている間から、時おりチラッと見えたり、それを恥ずかしそうに隠そうとする仕草にもっとも欲望がそそられるのです。
人間は、隠されれば隠されるほど「見たい!」「欲しい!」「知りたい!」という欲求が強くなる生き物だからと言えます。
結婚やグループ引退などでテレビに全く出てこなくなった有名人や歌手が、その後も継続的に熱狂的なファンの間で支持されているのも、このような心理が関係しています。テレビで活躍する姿をもう見ることができないという ”飢餓感(きがかん)” が、その有名人への想いをより一層強くしているのです。
この人間心理を活用し、「隠す」ということでそのサービスの価値を高める商法があります。歌手のGReeeeN(グリーン)やBUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)などマスコミやテレビに出演しない歌手は思っているより多く存在します。最近ではRADWIMPS(ラッドウインプス)などがそれにあたります。なかにはプロフィールをも隠して活動しているアーティストもいるほどです。
本人たちの意思はそれぞれの思いがあるとは思いますが、これは、わざと情報を隠し露出を控え、ただ楽曲だけを繰り返し繰り返しあらゆる場面で活用する。しだいに、「あれ歌ってるのって誰?」「あのCMの曲って誰が歌ってんの?」などと、人間の ”知りたい” という欲求を煽っている心理テクニックなのです。
芸能人や商品・サービスは、通常その長所や利点をアピールして売り出していくのが王道のセールスルート言えますが、時としてそのほとんどを「隠す」ことによって、通常通りに長所をアピールするよりも人々の欲求に非常に強く印象を残すことができるのです。
「自社のサービスに興味を抱いてくれない・・」なんて悩みを抱えているのなら、そのサービス自体の利点をあえて隠してしまうのです。「ここから先は契約をいただいているお客様のみの情報となりますので、本日はここまでとさせていただきます」と商談を切り上げてしまいましょう。すると妙にその内容を知りたくなった先方の担当者が、「先ほどの話なんですが、契約を前提にもう少し詳しくお話聞かせていただけませんか?」と電話をかけてくるかもしれません。
このように、交渉を成功させたいなら、全てを説明せずに ”一旦隠す” 。そうして相手の ”知りたい” 欲求を掻き立て、その交渉自体をこちらのペースに持っていくことができたら、あなたの交渉術はまた1つレベルが上がったと言えるでしょう。
難しい交渉は時間を味方につけろ
“締め切り” という時間には心理効果があります。そして誰もがその心理効果を体験してるはずです。
中学時代の期末試験、いつもは机に向かうなんてこととは無縁だったあなたも、明日がその試験だとなれば、あわてて勉強したはず。大学時代、毎日バイトして毎日クラブに行っていた学生も、今年単位を逃したら留年決定だとわかった途端に真面目になったりするものです。
この ”締め切りの効果” は、決して自分に対してのものだけではなく、的確に利用することで、相手の心を囲い込み、こちらの思惑通りにことを運ばせることも可能になります。
例えば、いつも決断の遅い優柔不断上司、なにかと先方の要望を呑むべきかで悩んでいる。何日もやり取りしているのに一向に前に進まない、いよいよ相手もしびれを切らしてイライラしてきます。そんなときは、「先方の担当者が明日から出張にでるので、何としても本日方向性を決めたいそうです!」と伝えるのです。すると、いままでさんざん決断できずにいた上司も、何らかの決断をせざるをえなくなります。
この交渉術は、逆に相手側の締め切りを知っている状況の方が効果的に使用することができます。この交渉術を大きく立証したこんな有名な話があります。
アメリカの心理交渉術専門家ハーブ・コーエン、FBIの交渉術講師にまでオファーを受けるほどのいわば交渉のプロです。そのコーエンがアメリカの企業の代理として、日本企業とある交渉を行った時のこと。 来日したコーエンを出迎えた日本企業の担当者は、まずは高級車で彼をホテルまで送り届け、その際「帰りも空港までお送りいたしますので、帰国はいつの飛行機になりますか?」と帰りの日時を聞きました。彼は何の疑いもなく帰りの日時を教えたのですが、このとき “締め切り時間” を教えてしまったことで、世界的交渉術のプロであるコーエンは、自分自信をとても不利な状況に追い込んでしまったのです。 このとき、帰りの日時は2週間後でしたが、その日から日本企業の担当者は、コーエンを日本の名所に連れて行ったり、数々の観光地を連れ回したのです。その間、交渉の時間は一切もたずに。 最初は歓迎に喜んでいたコーエンも、日にちが過ぎていくと同時にだんだん焦り始めましたが、日本企業の接待は止まらない。ようやく交渉がスタートしたのは、帰国予定日の2日前。さっそく持ち前の交渉術でアメリカ企業側の主張をアピールし始めましたが、それもつかの間、その後に入っていた接待のために交渉は、早々と切り上げられてしまう。翌日も交渉は再開されましたが、これもまた後にある接待のため早々に切り上げられてしまいます。 そして、本格的な交渉が始まったのは、帰国するまさに当日のことでした。帰りの飛行機の時間を気にしながら交渉に挑むコーエンでしたが、話がまだまだ決着しないうちにとうとう空港に向かう時間となりました。用意した車が迎えに来て、コーエンはとうとうその車内で最後の交渉に挑むはめになったのです。 そんなバタバタの状況では、さすがのコーエンでも本来の自分のペースで話を運ぶことができずにいました。 結局その交渉は、日本企業に有利な形で決着をむかえました。 |
このように、 “締め切りの効果” は、交渉のプロのペースさせ崩してしまうほどの効力があります。
冒頭に述べたほうに、どれだけその分野に精通している相手だったとしても、相手は所詮人間なのです。人間心理というものをきちんと使うことで、どんな相手にも屈することはありません。あなたにも簡単に操作出来てしまいます。
なかなか交渉が進まない場面や、その相手が自分に自信がある人間ほど、この交渉術には効力があります。相手の時間を把握し、その時間を意図的に操作することで、相手の心に切迫感を抱かせ、結果的に判断を鈍らせてしまうのです。
この交渉術は、あらゆるビジネスシーンに効力があるので、ここぞという時に使用しましょう。
交渉中、本当は「最小限の脅し」が一番効果がある
子供のとき、「早く寝ないとこわいお化けがででくるよ!」「ウソをついたらコワ~い閻魔様に舌を抜かれちゃうよ!」などと親に言われたものです。こういう “言い方” は、どこの家庭でも言っていることなので、いっけん効果があるように思われます。実際、その子供は、まんまと母親の言う脅しを怖がり、その場では早く寝たり、「もうウソは絶対つかない」と言ったりするものです。
しかし、その後もずっとその言いつけを守るかといったら、少々心もとなく感じます。というのは、この心理を裏付けるこんな実験があるからです。
大学生を対象に、歯の衛生状況に対する講義をしました。 このとき、学生は3つのグループに分けられ、
その後、この3つのグループを調査していく。
と、①のグループが一番不安に感じていたことがわかりました。 この結果だけを見ると、やはり強く脅すほうが効果的のように見えますが、その後の調査を見てみると、結果はまるで違ってきました。 2週間後、再度学生に集まってもらい、
と、最も軽い説明しかしていない③のグループの学生が一番多かったのです。 |
つまり、相手に恐怖心を与えて行動させようとするときは、あまりに強い脅しは、その場では効果があるように見えていても、実は逆効果となり、弱めの言葉で軽く脅しておく程度が、実際の行動には明らかに効果があるということなのです。
「早く寝ないとコワ~いお化けがででくるよ!」というのも、「早き寝ないと明日起きれなくなるよー」ぐらいに行っておくのが一番効果があるということ。
ビジネスシーンにおいても、大事な交渉の場で、「御社の現状をこのまま放っておくと、ゆくゆくシステム障害が起きて大変なことになる可能性がありますよ!うちのこのサービスは・・・」と言うよりは、「御社の現状では、システム障害が起きる可能性がありますね」とサラッと流す程度が一番効果があり、後の行動に大きく差が現れるのです。
強調されることなく不安要素を言われたその相手は、冷静にその現状に目を向け、不安を解消するべく、あなたの会社のサービスに興味を示すでしょう。
交渉とは、目の前の相手とするのではなく相手の心と交渉するのです。交渉術とは心理で真意を突くビジネステクニックなのです。
営業交渉には「比較」のトリックをつかえ
いまや ”100円ショップ” は街のいたるところで見かけます。あなたも一度は100円ショップで買い物をしたことがあるはずです。あの店では魔法の空気が流れていて、なぜかついつい不必要なモノまで買ってしまった経験がある人も少なくありません。
なんせ他で買ったら500円~600円はするだろう小物や食器が全て100円。ついつい「あ、これもいいな。あら、あれもいいな」と1つにしとけばいいものを何個も何個も買ってしまうことになりがちです。
まさしくこれが、人間心理を上手く突いた交渉術のひとつです。
人間は、何かと比較された途端、判断が鈍ってしまう生き物なのです。
100円ショップで雑貨を見ているとき、人間の脳には別の店にある同じような商品を無意識に思い浮かべています。このとき、「普通ならこれは450円くらいかな」といった値段が浮かんだ瞬間、「あれに比べるとこれは遥かに安い」という頭になり、それが必要かどうかは関係なくなってしまい、「安いから買っておくか」「お得だから買おう」という行動になってしまうのです。
このように、無意識に何かと比較をさせて判断力を鈍らせる心理テクニックは、私たちは日常の様々なシーンで目にしています。例えば、家電量販店の初売りで、わざと前の値札をそのまま貼り付けておくのもそのひとつと言えます。前の値札の下に、新しく値引きした値段を張っておき、「本来の値段よりずっとお安く頑張らせていただきました!」と客がわかるようにしておくわけです。
すると客は、その商品にどれだけの価値があるかどうかではなく、「こんなに値引きされているなんて得だ!」と判断を鈍らされて買っていくのです。
また、高額な買い物の代名詞でもある「車」の購入時にも同じような心理テクニックが多用されています。200万も300万もする車を購入した後では、数万円や数千円のカー用品は妙に安く感じるものです。なので普段なら絶対に買わないようなカー用品もついつい買ってしまうことになります。
ビジネスにおいての交渉シーンでも、最初に料金が高いほうのサービスを説明し、その後に、それよりも安いサービスの説明をするのです。そうすることで、相手の脳には「金額が安くなっている、これはお買い得かもしれない」という信号が生まれ、契約の展開を大いに早めることができます。
料金設定も決してひとつではなく、最低でも2つは用意し、似たようなサービスをやや高めに設定することで、相手は勝手に錯覚し「こっちの方が安いのね」と、なるのです。
ビジネス交渉を行う際、この交渉術は非常に高い心理効果をもたらしてくれるでしょう。
その質問はダメ!「前提条件」を使って答えを誘導しろ
あらゆる交渉の場で経験を積み交渉力が付いたビジネスマンは、人間心理をとてもよく理解しています。心理学の勉強など特にしていなくても、その経験から相手はどうすればこの商品を買ってくれるかを自然と体で学び、それをビジネスに活かしています。
そんな交渉上手なビジネスマンが使う心理テクニックに、「前提条件を暗示する」という方法があります。
例えば、フライパンや鍋などのキッチン用品をセールスする場合、「キッチン用品はどうですかー?」「どんな商品がご希望ですかー?」と聞いていたのでは、「間に合ってます―」で終了です。
しかし、「炒め物をよくしますか?それとも煮物系が多いですか?」と、具体的な選択肢を提示されて聞かれたらどうでしょう。こんなふうに質問されると、相手は無意識に「ん~、うちではどっちが多いかな」と頭に浮かび、「煮物の方が多いわね」となります。そうなればあとは、「それでしたらこの鍋がいいですよ」とすすめるだけです。
キッチン用品が必要かどうかなど一切聞かず、あたかもキッチン用品を買うことが既に前提条件になっているかのように話しを進めるのです。この前提条件をつけることで、相手に “買わなければならない” という錯覚を起こさせることができるというわけです。
このような前提条件に錯覚を起こしてしまう人間心理は、こんな実験でも明らかにされています。
時計と他のものが一緒に写っている写真をベテランの刑事に見てもらい、数分してからその写真について質問をする。 このとき、「写真に写っていた時計は何時でしたか?」と質問すると、「8時」「2時」と正確な答えを出す刑事が多かった。 ところが、「写真に写っていた時計が指していたのは9時でしたか?3時でしたか?」と質問すると、実際には8時だったのにもかかわらず、「9時」だの「3時」だのと答える刑事が増えたのです。 |
漠然と「何時でしたか?」と質問すると正確に答えた刑事でも、選択肢を前もって提示されると、そんなのはハナっから間違っているのにそのどちらかを選んでしまったのです。
人間は、選択肢を提示されるとその瞬間、思考の幅が非常に狭くなる生き物なのです。
それが正しいのか間違っているのかなんてどっかにいってしまい、 “どちらかから選ばなければいけない” という方向に心理が動いてしまうのです。そのため、大前提となる質問は飛ばしてしまい、その先にある具体的な選択肢を提示することで、相手の感情を自分の意図した方向に誘導することができてしまいます。
交渉シーンで相手の腰を上げさせたい場合は、そのサービスを導入するかしないかを議論するのではなく、そのサービスを導入することは前提として、どっちのサービスが取引企業には向いているかを先に提案してあげればいいのです。
この交渉術は、無意識に相手の心に入り込む万能なテクニックですので、あらゆるビジネスシーンに活用できることは間違いありません。
わかっているのに買ってしまう「限定」という言葉の威力
通販番組には、意外と多くのファンがいることはご存知でしょうか。健康食品やダイエット機器、キッチン用品や寝具まで、こと細かに商品説明をした後、「こちらの商品!今回に限り9,800円でご提供いたします!しかし!限定100名様まで!限定100名様までです!お電話お急ぎください!」という番組のことです。眺めているうちに思わず欲しくなり、電話をしてしまったという人は意外と多いのが不思議なものです。
買ったはいいものの、いざ商品が届くと「うわぁ、失敗した―」といったケースもよくあるようで、普通に考えれば高かったのではないか、同じようなものを既に持っていた、どうぜすぐに飽きて使わなくなりそう。買った後にそんな後悔をしてしまうのです。
そこで反省し、次から止めると心に決めるのですが、ついつい通販番組を見ていると、また別の商品が欲しくなり電話してしまう。そんな中毒患者も大勢いるのが現状なのです。
ではなぜ、通販番組を見てるとついつい欲しくなってしまうのでしょうか。
そこには、「〇〇名様限定でご提供いたします」とう言葉がポイントになっています。
人間は、「〇〇名様のみ!」「本日限り!」という限定条件を付けられると判断に狂いが生じる生き物です。
「限定」というからには、今のうちに手にしておかないと二度とチャンスは訪れないかもしれない。早く電話しなくちゃ他の人に先を越されて商品が無くなってしまうかもしれない。数量が限られている思うと、決断を早くしなければと錯覚し、冷静な判断ができないまま注文してしまうのです。
普通に考えれば、全国ネットの通販番組で、限定200個なんて数では採算が取れるはずがありません。これは単なる誘い文句のひとつで、実際その商品は山のように存在しています。しかし、いざ「限定」という言葉を耳にすると、人はそんな単純な判断力も働かなくなるものなのです。
この交渉術は、様々な交渉の場でも活用されています。
自社のサービスを営業するときは、「この料金でご提供できるのは、今月限りなんです。来月からは新料金でプラスのサービスがくっ付いてきちゃいまして・・」と言えば、そのプラスのサービスが不要だと思っている相手なら、迷わず月内に購入するでしょう。
モノを売るなら「この商品はあと1点しか残っていませんのでお早めに!」なんて言う言葉で相手の心をかき乱してやればいいのです。
「限定」といったうたい文句は、よく女性に効果があると言われていますが、心理学的には性別の関連性はなく、男女平等に効果のある交渉術といえますので、ビジネスシーンには大いに活用できるでしょう。
“裏” がわかればあとは “表” を操作するだけ
ビジネス交渉術は、相手の心を揺さぶり相手の頭の中に無意識な感情を生み出し、相手の判断を鈍らせる悪魔のような心理テクニックです。しかし、私たち人間は、日々あらゆる場面でこういった交渉術に引っかかり、操作されて生きています。
これから交渉に挑むビジネスマンも、この先交渉を受ける側のビジネスウーマンも、この6つの交渉術を知っているか知らないかでは、結果と方向性が大きく変わってくることは間違いありません。
また交渉相手の操作方法を忘れたときは、この記事を読み返し、体で覚えてしまいましょう。
そうなればあなたにとって交渉とは、呼吸をするように簡単にみえてくるはずです。